転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「そんなの……。今、だけですよ……。妹に好意を寄せられたら、ディルクさんだって……」
「あり得ない」

 ディルクさんは視線を逸した私の頬に優しく触れると、顔の向きを変えて真っ直ぐな視線をぶつけてきた。
 見ているだけで吸い込まれてしまいそうな深い海の色をした瞳には、怒気が孕んでいる。

「シエルは妹とは比べ物にならないほど、美しい」
「そんな社交辞令を真に受けるほど、優れた容姿ではないことくらい、自分でもよくわかっています……」
「俺は心が綺麗なシエルを、好ましく思っている」
「妹と比べたら、誰だって心優しい人に見えますよ……」
「その自信のなさそうな表情や仕草も、神秘的だ」

 ディルクさんが私のいいところを口にするたび、好かれる理由がないと嘆く。
 そんなこちらの反応を見かねた彼は、こじつけとしか言えない内容を次々に語り出す。

 聞いているだけでも、居心地が悪すぎてどうにかなりそうだ。

「それは、ユニコーンと一緒にいるからですよね……」
「ユーニィ!」

 思わず辟易してしまって助けを求めるように神獣の名前を出す。
 ユニコーンは「そうだよ!」とディルクさんの口にした内容を肯定するように、私の身体に擦り寄った。
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