転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「彼もシエルを、好ましく思っているようだ」
「ユニーン!」

 先程まで黙って話を聞いていたこの子は、ディルクさんに話しかけられた直後――何かを伝えるために一際大きな鳴き声を上げる。

『チャンスを逃したら、駄目だよ!』

 いつまで経っても何かと理由をつけてうじうじと悩んで、彼の手を取らないから。
 ユニコーンは考える暇があればディルクさんの手を取るべきだと、私の背中を押しているのかもしれない。

 一度結婚を了承したあと、やっぱりあなたを信じられませんでした。

 なんて、言えるわけがない。
 後戻りができない選択肢だからこそ、慎重になっているのが悪いのだろうか。

「私、間違ってる……?」
「ユーニィ!」

 あの子は「そうだよ」と肯定するように私から身体を離す。
 その後ディルクさんへ歩み寄り、胸元を優しく角で突いた。

「ユニコーン……」

 まるで彼は悪い人ではなくて、信頼できる人だと、ユニコーンから言われているみたいだった。

 ――この選択が間違っているかもと考えるだけでも、恐ろしくて仕方なかった。
< 130 / 249 >

この作品をシェア

pagetop