転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「シエルが描いた絵には、その時感じた想いが宿っている」
「私の、絵が……」
「ああ。楽しいと思いながら描けば、人々を喜ばせる。悲しくつらい思いで描けば、人々を苦しめる……」
「じゃあ……」
「真正面に飾られた絵は、特に怨念が宿っている。ある程度耐性のある俺達でさえも、悪意に引っ張られかけた」

 悲しい気持ちを発散するために描いた絵には聖なる力が宿り、完成した絵画を目にした人々を苦しませてしまうなんて……。

 そんなの、知らなかったでは済まされない。

 私がここで殿下に出会わなければ、金銭と引き換えに、たくさんの人を悲しませる絵画を生み出していたなど――そんなの、信じたくなかった。

「わ、私……。そんな、つもりじゃ……」

 そんなの、聖女なんて呼べない。
 どちらかと言えば、悪魔の所業だった。

 聖女とは人々を癒やし、慈しみ、穢れを知らず、つねに神聖な存在であるべきだ。

 なのに、私は――。

 そうした清廉潔白な異能を手にできなかった時点で、やはり無能と呼ばれるに相応しい存在なのだろう。
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