転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「はい。私は絵を描くのを、止めません」
「ああ。いい顔になったな」

 強い意志を瞳に秘めてはっきりと言葉にすれば、殿下は満足そうに口元を綻ばせた。

「前向きなのは、いいことだ」

 ディルクさんは、私の決意に同意してくれた。
 それが何よりも嬉しくて。
 膝の上で目を閉じ眠るユニコーンの身体を優しく撫でつけていれば、殿下に思わぬ提案を受けた。

「神殿で君を無能扱いしてきた奴らに、一泡吹かせたくはないか」

 やられたらやり返すなんて。
 そんなこと、考えたこともなかった。
 たった一人で立ち向かったところで、どうせ失敗するに決まっているから……。

「復讐は、何も産みません……」
「そうだな。負の連鎖が続くだけかもしれない」
「だったら……」
「俺は、こうも思うんだ。シエルだけが苦しむは、おかしいと」
「それは……。仕方のない、ことで……」
「そんな風に、無理やり自分を納得させないでくれ」
「ユニッ!?」

 気持ちよさそうに眠っていたユニコーンが、不穏な空気を察知して飛び起きた。
 オロオロと視線をさまよわせたあの子は、心配そうに私の顔を覗き込んで身を寄せる。
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