転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ――大丈夫だよって、ちゃんと伝えなきゃ。

 そう考えた私は、眉を伏せながらあの子の身体を撫でるのを再開した。

「嫌なものは嫌。苦しいことは苦しと、言葉にして伝えてくれ。そうしないと、ああ言う奴らはつけ上がるだけだ」
「殿下……」
「一度でも痛い目見れば、手を出して来ることはないだろう。シエルの聖なる力が本物なのか――試すには、ちょうどいい機会だ」

 私が無能な聖女ではなかったと、誰かに知ってほしい気持ちはゼロではない。
 だからこそ、私は……。

「私の、絵で……。本当に、誰かを、傷つけることができるのなら……」

 ――確かめてみたかった。
 それが本当に、聖なる力なのか。

 ――見てみたかった。
 私を馬鹿にしてきた人達が、この国一番の聖女と呼ばれるほどに強い力を持っていると知った時、どんな反応をするのか。

「あんたも随分、悪知恵が働くようになったじゃねぇか」
「シエルを傷つけた輩を、俺が野放しにしておくとでも?」
「違いねぇ」

 自らやってみたいと口にする前に、男性陣が軽口を叩き合う姿を目にして、冷静さを取り戻す。
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