転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「その絵は、君が描いたのか……?」
「は、はい……。どうしても、お金が必要で……。完成した絵を売って、画布を弁償するつもりだったのですが……」
「売却先に、心当たりは?」
「ありません」

 神殿暮らしの長い私が頼れるのは、一角獣だけだ。
 そんなもの、あるわけがなかった。
 人々の心を揺れ動かすような絵を描ければ、誰かしらが買い取ってくれると思い込んでいたのだが――どうやら、現実はそう簡単にはいかないようだ。
 男性の反応は、芳しくなかった。
 彼は呆れたように肩の力を抜くと、こちらに向かって疑問を投げかけた。

「いくらで売るつもりだ」

 家主から問いかけられた私は、すぐに答えを出せない。
 この画布がいくらで買えるかなど、想像もつかなかったからだ。

 日本ではA3サイズの大きさであれば、大体1000円程度で購入が可能だ。
 こちらの通貨に計算すると、金貨1枚だろうか。
 絵の具や筆といった細々なものを最低限揃えるためには、金貨3枚程度を見積もっておけばいい。
 シエルとして暮らすようになってからは、この世界の通貨で買い物をする経験も得られぬまま神殿に連れて来られたのだ。
 商品価値などわかるはずもなく、私は小さな声でポツリと答えを導き出した。
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