転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「ご苦労」
「殿下! お帰りなさいませ!」
「彼女は、俺の婚約者だ。丁重にもてなせ」

 殿下は門番さん達に挨拶をしたあと、当然のように中へと入っていく。

 変装していた時は、なんの問題もなく入れたけれど……。
 私だけ止められたら、どうしよう……?
 不安でいっぱいになった結果、ディルクさんと絡めた指先が小刻みに震える。

「ユーニィ?」

 私が顔色を変化させたからか。
 ユニコーンか不安そうに見つめている。

 早く前に進まなきゃと思うのに、どうしても足が竦んで、動けない――。

「ユニッ。ユニコッ!」

 私の異変を悟ったあの子が、裾を引っ張って前に引き摺ろうと試みる。
 そんな中、神獣の頭を優しく撫でつけてそれを止めたディルクさんが、私と絡めていた指先を離した。

「ディルク、さん……」

 伝えなければいけないのは、彼の名前ではなかったのに――。
 どうして私は、婚約者の名を呼んでしまったのだろう……?

「見つけたぞ! 聖女シエル!」

 自分で自分が、よくわからなくなった時だった。
 後方からバタバタと複数人の足音が聞こえてくる。
 その後、妹の次に顔を合わせたくない人物がここにやってきたと気づく。
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