転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「俺がいなければ、何もかもがうまく言ってたとでも?」
「ま、まさか……! ありえません! 我々神殿は、殿下の味方ですので……!」
「権力者の前ではゴマをすり態度を変える人間を、信用などできると思うか」

 私が必死に平常心で居続けようとしている間にも、ディルクさんは司祭に疑いの眼差しを向ける。
 聖職者は引き攣った笑みを浮かべ、元気よく返事をした。

「よ、四者面談でもなんでも! 喜んで、お受けいたします!」

 殿下はその言葉を受けて、満足したようだ。
 幼馴染の耳元で何かを囁いてから、私の手を引いた。

「行くぞ」
「あ……」

 ディルクさんに繋いだ指先を引っ張られた私は、婚約者の背中から飛び出して歩みを進めようとした。
 しかし、恐怖のほうが勝ったからぁ。
 どれほど動けと命じても足が竦んで言うことを聞いてくれない。

「司祭を連れてこい」
「はい!」

 相手は殿下だ。
 安心できる人のはずなのに――どうして、前に踏み出せないの……?

「シエル……?」
「ユーニィ……?」
< 154 / 249 >

この作品をシェア

pagetop