転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 私はぼーっとしている場合ではないと、身を引きしめる。
 これから本当に私が大聖女と呼ばれるに相応しい力を持っているか……。
 ここにいる皆さんへ、知らしめるのだ。

「これから一体、何が始まるのですか?」

 本当に、大丈夫なのかな?
 もし失敗したら――ここにいる人たちまで、罪人扱いされてしまう。
 そんな想いをいだいて怯えた私が、ディルクさんを止める間もなかった。

「君が見出せなかった、シエルの聖なる力を……」

 彼の言葉を耳にした侍女が合図を受け、絵画が一目に触れないように覆い隠していた布を勢いよく取り除いたからだ。

「これは……。海の絵、ですかな……?」

 祭司は私が深海を描いた絵を見ても、不思議そうに眉を顰めるだけだった。
 今のところ、なんの異変も感じられない。

「ああ。綺麗だろう? シエルが描いたんだ」

 ――ああ、やっぱり。
 長年無能と呼ばれていた私が大聖女と呼ばれるほどに強い力なんて、持っていなかったんだ……。

「ユッ!? ユニィ!」

 私は殿下の勘違いだったと結論づけ、諦めかける。
 すると、異変を察知したユニコーンが司祭の隣に座るカルトンさんの裾をグイグイと引っ張り、私たちのほうへ動かした。
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