転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「シエルが悲しんでいると、俺まで苦しくなる」
「どう、して……?」
「俺が君を、愛しているから」

 私は誰かを愛したことがないから、何度好きだと宣言されてもうまくその想いを消化できなかった。
 でも――婚約をユニコーンに置き換えてみれば、なんとなく今の彼がいだく気持ちがわかるような気がした。

 あの子が酷い目に遭えば、私も悲しい。
 傷つけてきた人に復讐してやりたいと思う。
 けれど――ユニコーンが嬉しそうにしていれば、私だって楽しい気持ちになれる。
 動物が人に変わっただけだと思えば、とてもわかりやすかった。

「あのような場面を目にすれば、シエルが傷つくとわかっていた。なのに、止めなかった。これは、俺の責任だ」
「ち、違います。ディルクさんのせいではありません……。これは私が、弱いから……」
「いや。シエルは、強い。あのような恐ろしい場面を目にしても、悲鳴を上げずに大人しくしていられた。そのおかげで、あの程度で済んだと考えるべきだ」
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