転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 侍女と一角獣の視線が一斉にこちらへ集中する。
 嬉しそうな鳴き声を上げたあの子は、勢いよく胸元へ飛び込んできた。
 私は神獣を優しく抱き止めて全体を撫でつけたい気持ちでいっぱいになりながらも、絵の具がついてしまうのを恐れてじっとしているしかない。

「ディルクさんは……?」
「殿下は、王城へ向かいました。そろそろ、戻ってくる頃かと」
「そうですか。ありがとうございます」

 侍女からは、敵意を感じない。
 いつだって仕事熱心で、一定の距離感を保って接してくれる。
 それに不満はないけれど……。
 私は彼女に心を開くタイミングを、すっかり見失っていた。

 リルマさんは、ディルクさんの側使えだもの……。
 仲良しになったほうが、殿下も喜んでくださるわよね……?

 彼女の立場上、あちらから声をかけてもらうのは無理だ。
 こちらから、勇気を出して話しかけないと。
 でも、私は女性同士で雑談なんてしたことがなくて……。
 そんな状態で、リルマさんと何を話せばいいんだろう……?

 思い悩んでいれば、こちらに向かって心配そうな視線を向けるユニコーンと目が合った。
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