転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ――結論から言えば、ディルクさんは悪い人ではなかった。

 むしろ、凄くいい人だ。

 アトリエの中にある画材はすべて好きに使っていいと言われたし、食事まで提供してくれた。
 完成した絵は然るべき場所で売買しているらしく、私の手元には小娘が生身で持ち歩くのはかなり問題のある金額が貯まった。
 彼と一緒に暮らすようになってから半年も経てば、金銭的な余裕ができた。
 ディルクさんの庇護を受けずとも新生活を営めそうだと自身を持ち、何度もここを出ていこうとしたのだが……。

「あの。やはり、私……」
「無理だな」

 そのたびに、家主から止められた。
 私はお尋ね者であるため、自警団に見つかった場合、神殿に捕まってしまうからだ。
 これは彼が自分を心配してくれたからこその判断だ。
 それをよくわかっているため、ディルクさんの好意に甘えてアトリエでお世話になっていた。

「この半年間、一心不乱に絵と向き合う君を見て、わかったことがある。
「なんでしょう…?」
「シエルは1人のほうが、絵に集中しやすい」
「そうですね……」
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