転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 そんな自分の考えを読み取ったかのように、わかりやすく説明してくれる。
 
 ディルクさんは、いつだって私の意思を尊重してくれる。
 そうでなければ、カルトンさんの言う通りさっさと結婚して逃げられなくしていただろう。
 
 夫婦になるとしたら、彼以外には考えられない。
 そう思っているからこそ、これ以上我慢を強いるわけにはいかなかった。

「ディルクさんは、今の状況を喜んでいますか……?」
「ああ。最高の気分だ」

 今すぐディルクさんのことが好きだと、妻になりたいと言えれば、きっと彼は最上級の幸福を得るのだろう。
 殿下が幸せになれるかどうかは、私の気持ち次第だとわかっているのに、愛を囁けない。
 そんな自分は、なんて不誠実なのだろうか。

 そんな自席の念に駆られながらも、彼に嘘の告白をした所で心の底から幸せな笑顔を浮かべられないと考え直す。

 私にとってディルクさんが、世界で一番大切な人になるまでにはこれから長い時間がかかる。
 たとえ、そうだとしても──少しずつ、ゆっくりと。
 私たちのペースで、歩み寄れたらいいな……。

「私、頑張ってみます」
「無理はするな」
「ありがとうございます、ディルクさん」
「どういたしまして。おやすみ。いい夢を」

 私とディルクさんは間にユニコーン挟んで川の字になり、眠りについた。
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