転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 このまま結論を先延ばしにしたら、彼の気が変わってしまうかもしれない。
 そう危惧した私は、思わずディルクさん問いかけていた。

「俺に聞くのか?」

 婚約者は驚きを隠せない様子を見せたあと、何故かユニコーンに視線を向ける。

「ユーニィ! ユニッ。ユニーン!」

 あの子は「個展を開くべきだよ!」と私たちへ訴えかけるように鳴き声を上げた。
 あとはディルクさんがどんな答えを出すかにかかっている。
 彼の返答次第で、私の運命が決まるのだ。
 婚約者にドキドキと高鳴る心臓の鼓動が聞こえませんようにと願いながら、静かにその時を待つ。

「シエル」

 すると彼は私の小さな指先に大きな両手を重ね、優しく包み込む。
 その意図がわからずにディルクさんの表情を確認すれば、彼は無言で大きく頷いた。

「わ、私……」
「ああ」

 これは恐らく、言葉にしなくても伝わっているだろうと遠回しに告げているのだろう。
 私はそう読み取り、自分の気持ちを伝えなくちゃと思う。

 そのたびに喉が引き攣る。
 つらくて苦しい気持ちがこみ上げてきて、涙が瞳に滲んだ。
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