転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「今回は、許します」
「いいのか……?」
「ディルクさんが私を信じて、準備を進めてくださったことは、知っているので……」

 本人の合意が取れなければ、無駄になるかもしれない。
 そんな状況でも、彼は秘密裏に舞台を整えてくれたのだ。
 ディルクさんの行動を非難する資格など、私にはなかった。

「すまない……」
「もう、いいですよ」

 ディルクさんは何度も申し訳なさそうに謝罪を繰り返す。
 その度にも謝らないでほしいと告げれば、私の髪を優しく手櫛で漉き始めた。
 婚約者の瞳には、様々な感情が浮かんでは消えて行った。

「あの女の件もある。君が危険な目に遭わなくて済むように、対策は万全に整えた。俺はシエルを、必ず守ってみせる。何があっても、絶対に……」
「ありがとう、ございます……」

 何度目かわからぬ頼りがいのある言葉を聞いた私は、優しく口元を綻ばせて微笑んだ。
 彼は自分が助けを求めたら、自らの危険を顧みず、手を取ってくれる。
 それが何よりもありがたいと思う。

 ――ディルクさんは私にとって、唯一無二の存在だ。
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