転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「絵が完成したら、声をかけてくれ」
「はい」

 パタリと音を立ててしまった扉を目にして一息ついたあと、アトリエに籠もる。
 絵が完成するまでは、自由気ままな1人と1匹生活だ。
 ユニコーンは絵を描くのに夢中な私が長時間飲まず食わずなことを知らせる時以外は寄ってこない。
 誰にも邪魔をされず、自由に油絵の具を使って絵を描けるのだ。
 これほど喜ばしいことはないと、大喜びで画布に向かい合ったのだけれど――。
 それから、どのくらいの時が経過しただろうか?

「ユニコ~!」

 切羽詰まったようなユニコーンの鳴き声とともに、裾が引っ張られる感覚がする。
 絵を描くのに集中していた私は、慌てて意識を現実に引き戻す。

「今、何時……」
「ユニ! ニコ!」

 壁掛け時計で時間を確認しようとすれば、神獣は「そっちじゃないよ」と言うようにグイグイと反対方向へ裾を引っ張る。
 何事かとそちらへ視線を向けると――。
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