転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「ど、どちらさま……ですか……?」

 私の描いた絵を風呂敷に包み、背中に担いだ見知らぬ男がこちらを振り返った。
 絵を描くのに集中している私が、我に返るなど思いもしなかったのだろう。
 男は真っ青な顔で、一目散に走り去っていく。

「ま、待って……!」

 男が持ち出した絵は、然るべき場所で売買をすれば価値のあるものだ。
 それを無断で奪われるなど、冗談ではない。
 私は慌てて椅子から立ち上がり、犯人の背中を追いかける。

「ユニコーン!」

 普段であればアトリエからは絶対に出ないが、今回ばかりは緊急事態だ。
 私の足じゃ、追いつけない。
 あの子に先んじて追いかけるよう命じたあと、力いっぱい叫ぶ。

「泥棒ー!」

 自分が追われているとか、自警団に見つかったら殺されるかもしれないとか。
 気が動転していた私は、そんなことすらすっかり忘れて大声を上げて叫んでいた。

「シエル!」

 だから、ディルクさんが助けを求める言葉を聞きつけやってきた姿を目にした時ーー彼でよかったとほっと一息つく羽目になった。

「その人、捕まえてくださ……!」
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