転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 なんでみんな、シエルがいいの?
 全部奪ってやったのに!
 何もかもをあたしのものにして、あの女を黙らせたのに!
 今世でも姉に勝ち逃げされるなんて、冗談じゃないわ……!

 ──膨れ上がったあの女に対する怨恨をぶつけるにふさわしい瞬間は、案外早くにやってきた。

「シエル様に倣って、油絵を始めたらいかがでしょうか?」

 ある侍女が口を滑らせ、姉の居場所を教えてくれたのだ。
 明らかにまずいと言う顔をして青ざめた所で、もう遅い。

 ──あの女に復讐する機会を、あたしが逃すはずないでしょう?

「ふふ……っ。あはは……!」

 ひとしきり笑い終えたあと、歪な笑みを浮かべてドスの聞いた声で呟く。

「待っていなさい、シエル・べサリオ!」

 忌々しいあの女の名を口にしたあたしは、灰色の瞳に仄暗い感情を宿して叫ぶ。

「ディルクと幸せいっぱいのあんたを、地獄に引きずり下ろしてあげるわ……!」

 鬼の形相でシエルを憎む自分を見つめる侍女たちが真っ青な顔で直立不動なのをいいことに、あたしはべサリオ公爵家から脱走した。
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