転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 入室を許可すれば、侍女が小走りで扉に向かう。
 着替えを済ませるまで、鍵をかけていたからだ。
 彼女が施錠を解除した直後、姿を見せたのは宮廷服に身を包んだディルクさんで――。

「シエル。そろそろ時間が……」

 彼は私と目を合わせた瞬間、ピタリと動きを止めた。
 その瞳は、大きく見開かれている。

 馬子にも衣装だって、驚いているのかもしれない……。
 恥ずかしくなって穴があったら入りたい気持ちになった私は、そそくさと音を立てないように席を立ち、リルムさんの背中に隠れて身を隠そうと試みる。

「ディルク、さ……っ」

 しかし、近くにいたディルクさんの手が私に伸びてきて、勢いよく抱き寄せられてしまった。

「あ、あの……。私、やっぱり……。着替えて……」
「このまま腕の中に閉じ込めておきたいほどに、綺麗だ……」

 彼は私の首筋に顔を埋めると、声を震わせながらか細い声で囁いた。
 最初は何を言われているか、よくわからなかったけど……。
 意味を理解すれば、狼狽えることしかできない。
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