転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 神獣が嬉しそうに「たくさんの人にシエルの絵を見てもらえてよかったね」と鳴く。
 その声を聞きながら、感極まって泣き出してしまいそうな気持ちを必死に抑えつける。
 その後、満足げに室内を警戒する彼の隣で、お客さんたちの様子を観察した。

「状況は」
「目立ったトラブルはありませんが……。大聖女様の絵を買いたいと手を挙げる方や、貢ぎ物がしたいと仰る方が多く……」
「そうか」
「いかがなさいますか。断りきれなかった分は、ひとまず宿舎で保管しておりますが」
「シエル。君は、どうしたい」

 ディルクさんはその間に、会場の警備を担当していた騎士団の人から現状の報告を受けていた。
 彼に問いかけられた私は自然と浮かんできた微笑みを讃えながら、婚約者に告げる。

「私が受け取っても問題ないものでしたら、ぜひ……」
「わかった。これより、貢ぎ物を受けつける。騎士団で中身を検めた後、こちらへ輸送してくれ」
「かしこまりました」
「それと、買い取りの件だが……。そちらは、殿下に一任している。リストを作って手渡せ」
「はっ」

 的確な指示を行うディルクさんは、とても頼りがいのある人だ。
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