転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 私の様子がおかしいことに気づいたユニコーンが、細い身体に寄り添う。
 神獣を褒めるように頭を優しく撫でながら、視線を下に落として唇を噛みしめる。

 1分1秒も、ここにはいたくなかった。

 他者の言葉は、鋭利な刃物だ。
 興味本位で聞き耳を立てれば過去の傷口が抉れてしまうと、よく知っていたから……。

「この絵も、飾るか」
「いえ。この絵は……」

 ディルクさんに問いかけられた私は、七色の虹をじっと見つめる。
 不安定な状態で筆を走らせ完成させた絵画が、人々に悪影響をもたらす可能性を憂慮したからだ。

 ――このままこの絵を、ここに放置しておくわけにはいかない。

 私はハンカチを使って画布を覆い隠すと、後片づけを始めた。

「帰ろう」

 彼に差し出された手を取るか迷ったのは、一瞬だ。
 ディルクさんだけは、妹に……。
 うんん。誰にも、奪われたくない。
 それが本心だと自覚した私は、自らの意志でその指先を掴んだ。
 離れないように、強く。
 指を絡めた私たちは、ユニコーンと共に帰路へついた。
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