転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「俺はカルトンのように女好きで、誰に対しても気が回せるほど明るくはない。どちらかと言えば、真逆の性格をしている」
「だからこそ、好きになったんですよ? ディルクさんが物静かで、かっこよくて、私に寄り添ってくださったから、心を許そうと思えました」

 この人を信じてみたい。
 そんな気持ちを愛に変えるのは、簡単なことではなかった。
 でも、それを難なくこなせたのは――彼が早い段階で、愛を囁いてくれたお陰だ。
 
「私はずっと、異性を愛する気持ちがよく、わからなかった」

 ――もしもあの時、好意の鱗片を見せてもらえなかったら。
 このアトリエで、自分の絵を好きだと言ってくれた人に出会えなかったら。

 いつだって優しく包み込み、そばで寄り添い、身を挺して守ろうとしてくれる、最愛の王弟と結ばれることはなかっただろう。

「ディルクさんが私に見返りを求めぬ愛を向けるたびに、思ったんです。誰かに好意をいだいてもらえるのは、とても幸せなことなのだと……」
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