転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 前世ではどれほど欲しても手に入らなかった。
 だからこそ、私は知っている。
 自分に愛を注いでくれる人が現れるのは、当然のことではないと――。

「もらってばかりなんて、いられません。私もディルクさんに、たくさんの愛を返したい。思いを通じ合わせて、相思相愛な夫婦を目指せたらいい。そう、思いました……」

 幸せになれる最後のチャンスを自分のものにして、彼と同じ気持ちになりたい。
 そう強く願えたのは、あの子との過去を精算して前を向いて生きていこうと決めたお陰だ。

「だから、地位や名誉なんて関係ありません。王弟じゃなくても、よかったんです。醜い心を持つ私を好きでいてくれたディルクさんだから、結婚したい。そんな私の願いは、叶える価値もありませんか……?」

 瞳を潤ませ懇願すれば、彼は激しく首を横に振った。
「そんなわけがない」と言いたいけれど、咄嗟に声が出なかったのかもしれない。
< 229 / 249 >

この作品をシェア

pagetop