転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ディルクさんは何故その話題を私の前でするのかと、理解に苦しむ。
 だが、そんな王弟の姿を目にしてもカルトンさんは声を発するのを止めなかった。

「なんでも、神殿が腐った組織だったことを知らなかったとか? 直接謝罪をさせてほしいって言ってるぜ」
「そう、なんですか……」

 べサリオ公爵と呼ばれる人間は、この世でたった1人しかいない。
 私はそれが父なのだと、理解していたけれど……。

 物心ついた時には親元から引き離され、聖女として暮らすようになったのだ。
 だからこそ――どうにもその男性が、自分の親という感覚がなかった。
 佐部志江留の両親は妹を贔屓し、いないものとして扱ってきたろくでなし。
 でも、べサリオ夫妻もそうだとは限らない。
 彼らは一体、どんな人たちだったのだろう……?

「ディルクさんは、どう思いますか……?」

 私は念のため、自ら答えを出す前に夫の意見を聞く。
 すると――彼は無言で首を横に振り、断固として反対のジェスチャーをした。
 それへ同意するように、ユニコーンも鳴き声を上げる。

「ユーニィッ!」

 みんなが自分と同じ気持ちだったと知って、ほっと胸を撫で下ろす。
 私は改めて自らの意思を、カルトンさんに告げた。
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