転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 私たち夫婦が帰路に就くと、普段であれば馬車が闊歩する特徴的な音を聞き分けたリルムさんがお屋敷の中から飛び出してきて、私たちを出迎えてくれるはずだった。
 しかし――今日はなんだか、様子がおかしい。

「ですから、お引取りください」

 ディルクさんのエスコートを受けて馬車を降りた私の耳へ真っ先に飛び込んできたのは、リルマさんが誰かを追い返そうとする声だった。

「一体、何が……」

 夫に何が起きているのか問いかけようとした時――正面入口から少し離れた場所に、べサリオ公爵家の馬車が停車しているのに気づく。

「シエル」

 ――カルトンさんから両親が私に会いたがってると事前に教えてもらったお陰で、取り乱すことはなかったけれど……。

 入り口を塞がれている状態では、あの人達と顔を合わせずに別荘へ戻るには、裏口から入るしかない。
 どうするべきかと頭を悩ませていれば、夫は気を利かせて私を抱き上げてくれた。

「強行突破するぞ。話しかけられても、無視して構わない」
「はい……」
「ユーニィ!」
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