転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 このまま会話を続けただけでは、望みが叶わないと焦ったのかもしれない。
 父はディルクさんの足元に縋りつき、母は土の上に座り込んで嗚咽を漏らし始めた。

 ――公爵夫妻ともあろうお方が、こんなところで泣き喚くなんて情けない。

 そう思うと同時に、別の感情が湧き上がる。
 涙を流すほど私と言葉を交わしたいと願うのなら、それだけ娘を愛している証拠だとと考えたのだ。

「ディルクさん。少しだけ、時間をもらえますか?」

 ディルクさんは私の声を耳にして、左右に首を振る。
「こんな奴らと会話する時間がもったいない」と言いたげな視線を受ければ、こちらも無理強いはできないと眉を伏せるしかない。

「ユニーン!」

 ユニコーンも夫の意見に賛成らしく、彼の足元に縋りつく父を角で突いて退かそうと必死になるくらいだ。

「君がどうしても彼らと言葉を交わしたいと願うのならば、俺にそれを止める権利はない」

 こんな状態では、言葉なんか交わせないか……。
 そう、諦めていた時のことだった。
 ディルクさんは口元を綻ばせると、私の好きにさせてくれた。
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