転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「大げさですよ。泥棒さんは、絵を欲しがっていただけで……」
「シエルがこの男に連れ去られていたらと考えるだけで、腸が煮えくり返る……」
「ディルクさん……」

 他者に抱きしめられるなど、初めてのことだ。
 こういう時どんな態度で、どんな言葉をかけていいのかすらもさっぱりわからない。
 ディルクさんはこちらが何も言わないのをいいことに、私を褒め称えた。

「もっと、自信を持ってくれ。君は、この国一番の画家だ」
「そんなこと……」
「シエルの描く絵は、すべてが素晴らしい。誰にも渡したくないと思うほどに、君を欲している……」

 謙遜すれば、不相応な賞賛をもらう。
 その繰り返しに驚いて顔を上げると、彼がこちらをじっと見つめて瞳を潤ませた。

 いつまで経っても続きの言葉が聞こえてこない辺りーーディルクさんはどうやら、こちらの解答を待っているようだ。

「ユニコ! ニコ!」

 どう反応すればわからず視線を彷徨わせると、泥棒さんに攻撃を加えるのに飽きた神獣と目が合った。
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