転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 獣は森の中で立ち話をしている場合ではないと、判断したのだろう。
 私の裾をクイクイと口に加えて引っ張り、アトリエのほうを指し示す。

「あ、あの。本当に……。危ないところ助けていただき、ありがとう、ございました……!」
「ユニコッ。ニコー!」

 我に返った私がディルクさんの腕から抜け出て距離を取ったあと、何度も頭を下げるのが気に食わないのか。
 神獣は勢いよく細い身体を口で掴んで己の背に乗せると、そのまま勢いよくアトリエに向かって駆け出した。

「ゆ、ユニコーン! 帰る場所は一緒なのだから、あのまま行動をともにしてもよかったのよ……?」
「ユニィッ」

ディルクさんへ「お先に失礼します」と声をかける暇もなく、住居まで戻ってきてしまった。

「泥棒さんはあのあと、どうなるのかしら……?」
「ユーニ!」

 不安がる私を、ユニコーンはリビングに連れてきた。
 「あんな男のことは忘れて、食事にしよう」と言わんばかりに馴れた手つきで果実を机の上に並べ始めた。

「そうね……。細かいことは、ディルクさんが帰って来てから聞けばいいもの……」
「ユーニ!」

 そう決めた私は、1人と1匹の穏やかな暮らしに戻った。
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