転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 まさか自分がお礼を言われるなど、思ってもみなかったのだろう。

 ユニコーンは「この人たち、何を言ってるの? 怖い」と慌てた様子でディルクさんの背中に縋りつく。
 涙ながらに語る両親の姿を目にした私は、信じられない気持ちでいっぱいだった。

 前世の両親は口を開くたびに乃絵留の名前を叫び、私を罵倒していた。
 なのに……。
 べサリオ公爵夫婦は、真逆の反応を示したからだ。

「ノエルのことなら、気にしなくていいのよ。あの子が貴族として、あるまじき立ち振舞いしたのは事実ですもの」
「君が幸せに暮らしてくれたら、それでいいんだ。ああ、シエル。私たちの愛の結晶……」
「ええ、そうね。あなた。シエルがいれば、ノエルなんて必要ないわ」

 母の言葉を聞いた瞬間、我が耳を疑った。

 ――これでは、立場が逆転しただけだ。

 必要とされたのが姉で、不要とされたのが妹だっただけ。
 今までと、何も変わらない……。

「君はすでに、殿下のものだ。一緒には暮らせないとわかっているが……。これからも、助け合って生きていきたいと思っている」
「いつでも、遊びに来て。離れて暮らしていた時のことを、たくさんお話しましょう?」
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