転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 何か言いたげな夫に向けて話はこれで終わりだと言うように、私は瞳を潤ませてディルクさんに懇願した。

「今日も、川の字で眠りたいです。いいですか……?」
「ああ」

 ディルクさんは壁際で目を瞑ったユニコーンを放置し、私を抱き上げたままベッドの上に寝そべった。
 いつもはあの子が真ん中にいるから、変な感じだ。

「実は、ちょっとだけ。後悔したことがあるんです」
「彼らの主張に、耳を傾けたことか」
「はい……」

 過去を悔やんだところで時を巻き戻せないのなら、聞かなかったことにして生きるほうがいいと思った。
 しかし、それは誤りだった。

「でも……必要以上に気にしても、仕方ないと思ったんです」

 大事なのは、ディルクさんと幸福に暮らす今の生活だ。
 両親や妹に何かあったところで、私の人生には関係がないのだから……。

「私にはディルクさんとユニコーンがいれば、それだけでいいので……」

 彼は私の告白を耳にして一瞬嬉しそうな表情をしたが、すぐさま露骨に難しい顔をする。
 神獣の話は、しないほうがよかったのだろう。
 ディルクさんは、嫉妬深い人だから……。
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