転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 白い結婚を誓い合った私たちのスキンシップは唇を触れ合わせるまで、そこから先には進まない、清い関係だけれど。

 案外うまくやれているのは、彼が私に男女の関係を匂わすような行動をしないからなのかもしれないね。

 それから――夫そっちのけで四六時中絵を描いていても、文句を言われないのがいい。
 私にとって絵を描くのは精神の安定を保つためには欠かせないことであり、貴重な収入源でもあるから。

「珍しいな」

 真っ白な画布に筆を滑らせていた私は、ディルクさんの声によって我に返る。
 夫が完成した絵画を目にして、不思議そうな声を上げるのも無理はない。

 そこには風景画ではなく――人物が描かれていたから。

「どうでしょうか。人物画は、苦手だったのですが……」
「悪くない。いや、むしろ。とても素敵だ」
「そうですよね! よかった……!」

 ユニコーンと、ディルクさん。
 カルトンさんにリルムさん。
 私の大好きな人たちを描けば、彼は口元を綻ばせて褒めてくれた。
 それが何よりも嬉しくて。
 ほっと胸を撫で下ろせば、耳元から低い声が聞こえてきた。
< 247 / 249 >

この作品をシェア

pagetop