転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「世界で一番美しい俺の妻が描かれていないのが、気がかりだ」
「それは私も、よくないかもしれないと思っていました。ですが自分を描き、美化しすぎだと思われるのが嫌だったので……」

 大聖女と呼ばれる人間の容姿が劣っていると知られたら、せっかくの信仰心が台無しになってしまう。

 崇められたところでいい気分はしないけど、貶されるくらいだったら少しでもよく思われたい。
 そう考えた結果だったのだが、ディルクさんが自分の隣に私がいないのと不満そうな声を上げるなら、仕方ないよね。

「人物画は練習中なんです。今度は私も描きますね」
「ああ。それがいい。完成を、楽しみにしている」
「はい!」

 ディルクさんは私の描く絵を、いつだって心待ちにしてくれる。
 それが何よりも嬉しくて。
 暇さえあれば、画布に筆を走らせてしまう。
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