転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「いつもの君に、戻ったな……」
「すみません。初対面で他者と打ち解けられるほど、明るい性格をしていなくて……」
「いや。謝らないでくれ。責めているわけじゃない。ただ……」

 ディルクさんは壁に飾られた1枚の風景画をじっと見上げ、不安な気持ちを吐露する。

「俺にも警戒を続けられたらどうしようかと、不安で仕方がなかった」

 彼は屈強な体躯を持つ、目つきが鋭く厳格そうな顔たちの男性だ。
 しかしーー外見からは想像もつかないほどに心配性で優しい人だった。
 ひと目見ただけではわからないディルクさんの内面を知れたのは、半年間共同生活を続けてきたからこそだ。

「ユニコーンも、心を許していますし……。拒む理由がありません」
「俺が君を失いたくないと思うほどに、深く愛していると知っても?」

 ディルクさんから思ってもみない発言が聞こえてきて、驚いた。
 私を愛してくれる人なんて、世界中のどこを探してもいないと思っていたから……。

「喜ぶことはあっても、拒絶などしませんよ?」

 どうやら彼は、冗談めかして告げたこちらの発言を信じきれないようだ。
 ディルクさんは、難しい表情で思い悩む。
 そんな彼の姿を目にし、思いきってある提案を試みる。
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