転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「もし、よろしければ……抱きしめて頂けませんか?」

 私から抱きつくためには、膝の上に頭を乗せて気持ちよく眠るユニコーンを退ける必要があった。
 いくらディルクさんに心を許しているとしても、なんの前触れもなく無理やり退ければ、この子はきっと睡眠を邪魔した彼に怒り狂うだろう。

「ああ……」

 彼はこちらの誘いに生返事をしたあと、心ここにあらずな様子で恐る恐る歩みを進める。
 その様子はまるで、私の意のままに動く操り人形のようだった。

 ーー手と足が、同時に出ているわ……。

 ディルクさんもまさかこんな展開になるなど想像もしておらず、困惑しているのかもしれない。
 その姿がなんだかおかしくて、自然と笑みが浮かぶ。

「触るぞ」
「はい」

 彼に抱きしめられるのは、2度目だ。
 こうして密着していると、心が暖かな気持ちに包まれる。
 心地よさを噛みしめ、多幸感でいっぱいな時間は長くは続かない。

 神殿で暮らしていた頃にいだいた苦痛は一体なんだったのかーー。
 そんな無力感に、苛まれたからだ。
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