転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「私はどうして、生きているのでしょう……」

 彼に問いかけたところで、わかるはずがなかった。
 私の苦しみをディルクさんに打ち明けたことなど、ないのだから……。
 
「……嫌なことでも、あったのか」

 でも、彼は気を利かせてこちらへ寄り添う姿勢を見せてくれた。
 それが何よりも嬉しくてーー私はつい、打ち明けてしまった。
 誰にも話したことのない、心の奥深くに押し留めていた感情を。

「ええ。苦痛しか、ありませんでした」

 脳裏には、思い出したくないことばかりが何度も再生されては消えていく。

『お姉ちゃんなんだから、妹に譲るのは当然のことでしょう!?』

 前世では、先に生まれただけで妹にすべてを奪われた。

『手違い聖女』
『聖なる力を持たないお荷物』

 今世では神殿で働く人々からストレス発散のはけ口として、サウンドバックのような扱いを受けた。

『ユニィ!』

 私を愛し、守り、助けてくれるのはユニコーンだけ。
 ――そのはずだったのに……。

『シエル。もっと自信を持っていいんだ』

 ディルクさんだけは、私の描く絵に価値を見出してくれた。
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