転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 私が人間を信じられないと悟り、少し距離を起きながらも遠くから見守ってくれた。
 愛を囁いてくれた。
 それが何よりも嬉しくて、私は彼を心の底から信頼し始めていたのにーー。

「――君にとって結婚は、嫌な場所から逃れられる手段ではなかったのか」

 ディルクさんの疑問は、そのすべてを無に帰すのに充分すぎるほどの効果があった。

 もしかすると彼は、私が神殿から逃げてきたシエル・べサリオだと知っているのかもしれない。
 そうでなければ、このタイミングで結婚なんて単語が出てくるはずがなかった。

 ――うまく、交わせるだろうか。

 いや、作り笑顔を浮かべて、何事もなかったかのような表情で告げるべきだ。
 そう考えた私は、淡々と言葉を紡ぐ。

「政略結婚なんて、人生の墓場でしょう」

 妹に怯える前世の私だったら、口答えなどできずいいなりになっていた。
 けれど――ここには私からすべてを奪った乃絵留はいない。
 大好きなユニコーンが神殿から私を連れ出してくれたお陰で、こうしてディルクさんに出会えたのだ。
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