転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 恐れることなど、何もない。
 自分自身の意志でここにやってきて生きているのだと伝えたい。
 そう思ったからこそ、ずっと心の奥底に押し留めていた言葉を発する。

「顔も見たことがなければ名前も知らぬ相手に嫁いだところで、それが今よりも苦痛を強いてくる相手だとしたら……。一生逃れられない地獄に、身を置くことになります」
「君に愛を注ぐ、優しい夫の可能性は考慮しないのか」
「そんな夢みたいな話は、ありえません」

 ディルクさんは私が断言したことに、驚きを隠せないようだった。
 大きく目を見張った彼は、悔しそうに唇を噛みしめる。
 まるで、自分が受けた痛みをぐっと堪えるかのように……。

「君の考えは、よくわかった」
「……すみません。ディルクさんは、私を愛していると言ってくださったのに……。こんな話をするべきでは、なかったですよね……」

 彼はこちらの言葉を否定するように、口元を緩める。
 その後、嬉しそうに微笑んだ。

 どうして、笑ってくれたの……?
 遠回しに、結婚はしたくないと告白を断っているようなものなのに……。
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