転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 私が理解できず、難しい表情をしていたからか。
 すぐさま無表情に戻った彼は、居心地が悪そうに大きな図体を屈めて1枚の絵画を手に取った。

「俺は、君の描く海が好きだ」

 ディルクさんは私がよく描く深海色と同じ、ダークブルーの髪が印象的な男性だ。
 だからこそ親近感が沸いているのかもしれない。

「そうですか……」

 私は言葉にできない思いを、絵に乗せて伝えたいだけだ。
 他人から褒められる絵なんか描いても、いい作品にはならない。
 それがよくわかっているからこそ、生返事しかできなかった。

「絵の続きを、描いても?」
「ああ……。俺は、リビングにいる。何かあったら、呼んでくれ」
「わかりました」

 このまま会話を続けたところで互いに気まずい思いをするだけだと、彼も気づいたのだろう。
 ディルクさんは絵画を元の場所へ戻すと、リビングへ姿を消した。
 私はそれを確認してから、再び画布に向き合った。

 ――彼が微笑んだ理由を、考えながら。
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