転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 今すぐに彼女を抱きしめたい気持ちをぐっと堪え、俺は彼女の様子を窺う。

「私は、シエルと申します」

 気まずそうに声を震わせながら名前を名乗ったあたり、こちらが神殿に突き出すのではないかと不安がっているようだ。
 そんな姿が愛らしく、愛おしいと思うのは、シエルに一目惚れしたからなのか……。

 ーー俺は15年越しに彼女と言葉を交わすという悲願を達成し、シエルをこの別荘で匿うことにした。

 2人と1匹の暮らしはとても穏やかで、毎日この幸せが永遠に続けばいいのにと願わずにはいられない。

 しかし、そんなささやかな願望は、招かれざる客のせいで壊れてしまう。

 シエルの描いた絵を盗もうと試みる輩が現れたのだ。
 泥棒を自らの手で捕まえるためにユニコーンと協力して1人で立ち向かう姿を見た時は肝が冷え、ついつい欲が出てしまった。

「誰にも渡したくないと思うほどに、君を欲している……」

 彼女を抱きしめて心の奥底に隠していた思いをぶつけるが、うまくシエルには伝わらなかった。
 
 ユニコーンに邪魔をされてしまい、うまく自分の思いを告げられなかったのは誤算だった。
 だが、焦る必要はない。
 時間はたっぷりとあるのだから……。
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