転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 もしもシエルが無意識的に、自分が受けた苦痛を絵に乗せているのだとしたら……。
 彼女が受けた苦しみや悲しみを、果たして癒せるのだろうか?

「深く愛している」

 俺はいても経ってもいられず、シエルに想いを告げた。
 少しでも早く、知ってほしかったのだ。
 君を愛している人が、目の前にいることを……。

 最初のうちはよかった。
 抱きしめる許可を得られたし、多幸感でいっぱいになった。
 しかしこの直後、エルの口から問題発言が飛び出してしまう。

「政略結婚なんて、人生の墓場でしょう」

 傷つくのが怖いから。
 酷い目に遭うのが嫌だから。

 その言葉を耳にした俺は、愕然とした。
 虐げられる前提で話す彼女の心の傷は、自分が想像している以上に根深いと知ったからだ。

『ほかの奴らとは違う』

 俺はそんなふうに、この場で彼女の結婚相手だと名乗り出るべきだったのだろうか?

「君に愛を注ぐ、優しい夫の可能性は考慮しないのか」
「そんな夢みたいな話は、ありえません」

 ――悩み抜いた末の決断は、恐らくシエルにとっては不正解だった。
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