転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「お疲れさん」

 椅子に座るカルトンの出迎えを受けた俺は、リルマの姿がないことを確認してから対面の席に座った。

「嫁さんとは、話せたか?」
「ああ」
「で? どうよ」

 ここで本当のことを言えば、間違いなく茶化されるとわかっていた。
 しかし――。
 嘘をついたところで、なんの意味もない。
 自身の不利益にしかならないとわかっているのであれば、正直に打ち明けるべきだ。

「守りたいと思う気持ちが、増した」
「そりゃ、お熱いことで」

 茶化してくる暇があれば、さっさと現状報告をしてほしい。
 そんな思いを込めて睨みつけてやれば、幼馴染は前傾姿勢になって膝の上で両手を組む。
 その体制が真面目な話をする時の態度だと知っているからこそ、俺は彼の口から声が発されるのを待った。

「あの子の描いた絵は心の弱った人間が見ると、負の感情を増強させる効果があるみてぇだな」
「ああ」
「あるものは嘆き悲しみ、絵画に縋りついて許しを請い、同じ苦痛を味わったであろう絵師に会わせてほしいと懇願しやがった」

 シエルの絵に特別な力がある。
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