転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
『あたし、絵画コンクールで金賞を取ったの!』

 カツカツ、コツコツと響く足音は、私にとっては恐怖心を増強させるものでしかなかった。

 ――違う。それは私の作品よ。
 間違いを正して。今すぐに。
 そうじゃないと――。

「来ないで……!」

 あの時言えなかった言葉を口にした瞬間、私は悪夢から目覚めた。

「ユニコッ!? ユニーン!」

 どうやら絵を描いている最中に、座ったまま眠ってしまったようだ。
 ユニコーンは私が意識を覚醒させたことに気づいて、心配そうな鳴き声を上げる。
 魘されていたせいで全身に汗が纏わりつく。
 それが、不愉快で仕方ない。

「ユニコーン……」

 二度寝なんて、とてもじゃないけれどする気にはなれなかった。
 大人になってからは、こうした夢を見る機会も減っていたのに――。
 どうして今なのかと困惑しながら、あの子を抱きしめた時だった。

「すまない……」

 ここにいるはずのない男性の低い声が間近に聞こえて、私は全身を硬直させる。
 恐る恐る視線を向ける。
 するとそこには、居心地が悪そうに俯くディルクさんの姿があった。
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