転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「このままそばにいて欲しいと、願ったら……」

 この人は私の目を見て、ちゃんと話を聞いてくれる。
 いないものとして扱わず、1人の人間として――主張に耳を傾けてくれた。
 だからきっと、大丈夫。
 そう何度も自分に言い聞かせた私は、助けを求める。

「ずっと一緒に、居てくれる……?」

 断られるに決まっている。
 なのに、期待なんかして馬鹿みたいだと思う自分がいる一方で――彼が頷く瞬間を心待ちにする自分がおかしくて堪らない。

 ディルクさんの声が聞こえてくるまでの時間は、死刑執行を待つ罪人のように、生きた心地がしなかった。

 早くこの苦しみから開放されたい。
 彼に拒絶されたら、今まで以上に傷つくとわかっていた。

 それでも……。
 私はただじっと椅子に座ったまま、回答を待ち続ける。
 その時間は一瞬のはずだったのに、こちらからしてみれば死刑執行を待つ罪人のような気持ちだった。

「俺がそばにいることで、君が悪夢に魘されないなら」

 彼は床の上に腰を下ろすと、ゆっくりと手を差し伸べた。
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