転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「な、なんでもない……です……」

 途端に恥ずかしくなった私は、浮かんだ言葉をぐっと飲み込む。
 その後とってつけた敬語を口にしながら、ベッドに背中を預けた。

「してほしいことがあれば、なんでも命じてくれ。できる限り、君の要望に応えるつもりだ」
「どうして、そこまで……。私に尽くしてくれるの……?」

 こちらの疑問を耳にした彼は伝えづらそうに言い淀んだあと、聞き取りづらい声でぽつりと呟く。

「俺が君を、放っておけない」

 ディルクさんは、君が好きだからとは言ってくれなかった。

 ーー当然だ。
 その告白を拒絶して、なかったことにして今まで通りの生活を続けているのだから。

 愛なんて、囁かれるはずがないとわかっていたのに……。
 落胆するのを止められないのは、彼のことを好きになりつつあるからなのだろうか……?

「そう、なんだ……」

 こういう時、自分からどうして好きだと言ってくれないんだと強く言える人になりたかった。
 そうすれば、こんなふうに気まずい思いをしなくて済んだのに……。
 タイミングの悪い女と言う言葉が、頭の中でぐるぐると回る。
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