転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 今世では幼い頃に親元を引き離されたが、容姿には恵まれた。
 以前とは異なり、信頼のおけるユニコーンと頼れる大人に巡り会えた。
 ディルクさんだって、私の愚痴を聞いてくれている。

 前世よりもマシなこの環境で満足できないと嘆くから、きっとバチが当たったのだ。

 現状に満足できず、前世の妹に奪われたすべてを取り返し――あの子のようになりたいと願えば願うほど、私は惨めな気持ちのまま過ごすことになるのだろう。

 ――わかっている。
 前世など忘れて、今を生きるべきだと。

 ――わかっている。
 みんなと一緒なら、誰にも邪魔されることなく絵を描き続けられるって。

 ――わかっているのに、どうして……。

 この醜い感情を捨て去ることができずに、惨めな思いをいだき続けているのだろう?

「ないものねだりを続ける自分が嫌い。私なんか、生まれて来なければよかった……!」

 醜い心の内をすべて吐露しきった私は、ついに声を上げて泣き出してしまった。
 みっともなく涙を流して縋ったところで、愛は手に入らないと自覚しているはずなのに……。
 一度溢れ出したら、簡単には止められない。

「うぅ……っ。うああーん……!」
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