転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 声を上げて子どものように喚きたくても、守る価値のないちっぽけなプライドがそれを許しはしない。
 強がることでしか自身を保てなかった私は、そんなに弱くないと言い聞かせることで命を繋いでいた。

「もう私の人生に関係ない人なんだから、夢にまで出てこないで! やっと幸せになれると、思ったのに……! あの子のことを思い出すたび苦しくて……っ。惨めな気持ちでいっぱいになる……!」

 まるで私が幸せになる権利などないとあの子に呪いをかけられているみたいで、不愉快だった。

「私からすべてを奪っておいて、まだ足りないの!?」

 この気持ちをぶつけたい相手はここには存在しないのに、彼女に対する憎悪ばかりが募る。

「最悪で、最低だ……」

 こんな内容を聞かされるディルクさんの身になって、声に出す内容をしっかり精査するべきだったのに――。

「二度と夢に現れないで……! 人間なんて、大嫌い! 誰1人信用に値しないのなら、もう……っ」

 一度決壊したダムは、すべての水を放出するまで止まれなかった。

「シエル」

 最後のほうは自分が何を言っているかわからなくなるほどに、妹に対するありとあらゆる暴言を吐き出し終えて荒い呼吸を整えていると、ある異変が起きる。
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