転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
『お姉ちゃん、あたしが嫌だから家を出たんでしょ?』

 一人暮らしの家は、自分が唯一安心できる場所だ。
 そう思ってたのに――押しかけてきた妹が室内にいると気づいて、張り詰めていた緊張の糸が途切れてしまった。

『逃げられるなんて、思わないでよね』

 ――もう無理だ。
 耐えられない。
 そうして自宅を飛び出した私は、勢いよく車道を横切ろうとして――。

 最低最悪な一度目の人生は、私が自ら命を落とす必要もなくあっさりと終わった。

 ――ああ、やっと、苦しみから解放されるのね。

 妹の奴隷として生きる人生が。
 両親に愛されず、誰からも手を差し伸べてもらえない孤独な日々が。
 苦しみや痛みから解放されるのだ。
 これほど嬉しいことはないと、喜んだ矢先のことだった。

 ――私は別人として、生まれ変わってしまった。

 唯一の幸運は、二度目の人生が現代日本ではなく、異世界で生まれたことだろうか。
 苦しいことも、悲しいことも、もう二度と経験したくなったからこそ心機一転――前世のことなんて忘れて、次の人生を今度こそ1人で満喫し、穏やかに過ごそう。
 そんなふうに思っていたのに―。
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