転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「私は、なんてことを……」

 ――知らなかったでは済まされなかった。
 そんな状況に自分が置かれているのだと気づき、唇を震わせるしかない。

「このまま溜め込み続ければ、君が壊れてしまうと」

 今は一刻も早く、苦しそうに表情を歪めて淡々と言葉を口にするディルクさんの意見が聞きたい。
 私は口を挟むことなく、静かに待ち続けた。

「今までは、絵を描くことで醜い感情を発散していたかもしれない。だが、これからは――。そうした感情は、俺にぶつけてほしい」
「どうして……?」
「君の悩みや苦痛を共通し、憂いを取り除きたいと思った」

 すると、彼の唇からは意外な言葉が紡がれる。
 ディルクさんは醜い私の感情を耳にしても、それを否定することなく受け入れて寄り添うつもりのようだ。

「そんなの、おかしいわ……。ディルクさんは、他人なのに……」
「だからこそ、力になれることもある」

 あまりにも自分の都合がよすぎる展開に面食らってしまい、再び彼の好意を反射的に拒絶してしまった。
 それでもディルクさんは私を見捨てることなく、まっすぐこちらを見つめて宣言してくれた。
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