転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「どうして、そこまで……」
「放っておけないからだ」

 何度目かわからぬ優しい言葉を口にした彼は、桃色の瞳を見つめて忌々しそうに吐き捨てる。

「君の心の叫びを聞いて見て見ぬ振りをするような人間は、男の風上にも置けない」
「ディルク、さん……」
「たとえ君に嫌われていたとしても、構わない。俺はシエルの、力になりたいんだ」

 嫌うなんてあり得ない。
 こうして私の主張せずに受け入れてくれただけでも充分だった。
 
「一度では伝わらないのであれば、何度だって伝えよう。俺が君を、愛しているのだと」

 ディルクさんは恐らく、前世の記憶を引き摺って「誰からも好きになれなかった」と吐露した姿を目にして、己の感情がうまく伝わっていないと判断したのだろう。
 まっすぐに目を見て、私がずっと欲していた言葉をくれた。

 それが何よりも、嬉しくて……。
 つい、彼を頼ってしまう。

「あの子に対する醜い感情は、山程あるの」
「好きなだけ、語ればいい。俺でよければ、いくらでも聞こう」

 ディルクさんの優しさに触れた私は彼の手を握りしめると、朝になるまで一方的に妹への愚痴を滾々と語り続けた。
< 63 / 249 >

この作品をシェア

pagetop