転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 今までは、ディルクさんのアトリエにある絵の具を使わせてもらっていた。
 自分の目で見て、好きなだけ画材を買い漁れる。
 こんな貴重な機会を、みすみす逃すわけにはいかなかった。

「興味が湧いてきただろう?」
「は、はい……!」

 1人では神殿に見つかるリスクを犯してまで、外に出たいと思わないけれど――。
ディルクさんが一緒なら、どんなことがあってもここに戻ってこられるような気がした。

「行こう」

 もしも昨日吐き出した弱音を受け入れてもらえなかったら、彼の差し出された手に自ら触れようとは思わなかっただろう。

 今すぐには前世の悲しい出来事を、忘れることなどできないけれど……。
 少しずつ着実に、楽しい出来事で上書きできるようになりたい。
 そう、思うから。

「よろしくお願いします」

 私はしっかり頷き、彼とともに街へ向かった。
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